「コールサック」日本・韓国・アジア・世界の詩人

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杉本 知政 (すぎもと ともまさ)

<経歴>


1932年、岡山県生まれ、岡山県赤磐市在住。

詩集『沈黙への質問』『風の声』『ひとすじのあかりを』『土の口伝』『伝言』『時と歩んで』『迷い蝶』

詩画集『夢のむこうへ』。

随筆集『石なんご』。

日本現代詩人会、関西詩人協会、中四国詩人会、岡山県詩人協会、各会員。

「コールサック」に寄稿。

<詩作品>



語りかけて




菜園は何時も囁きに満ちている
小さないのちたちの
ぽつぽつと訪れる雨の音の
時折立ち止る風の音の


土の幼児たちは祈り続ける天使
季節の呼声に目を覚し
赤や黄や緑に熟れた思いを手渡してくれる
今はトマトやナスが
花びらを震わせ燕と語り合っている


夏空は紅く落ち始めていた
夢の形を結んでは解いている雲の峯
苦しみに少し楽しさを混ぜた縒糸にもたれ
語りかけている総ての声を聴きたいと思う
肌を透けて心の扉を叩く響きを


燕の囀りの少し向こう
誰にも届かない言葉を抱え
ひっそりと立っている影が気になっている





白い鳥




女郎蜘蛛が一匹
総ての肢を意志に変え
空に張り付いている
約束の無い獲物の訪れを
唯じっと待っている
ひたすら待つ
その行為だけが
生存を支える期待の全部である


人間はそのように
只待ったり耐えたりはしまい
例えば
悲しみや怒りを抱いている時でも
にこやかな笑顔を装い
本当の貌を見せないこともある
言葉の内側に
鋭い毒針を隠していても
それに蜜をまぶして手渡し
相手を惑わすこともあるから


けれども明日からの出合いの時は
露草の花のような清々しさで
瞳のくもりを拭ってほしい
話し合う声も
小鳥たちの囀りのように
心の糸を弾き酔わせてほしい


空はどこまでも蒼く澄んでいた
昨日あの人へ伝えられなかった言葉たちが
鳥の象に翼を連ね
銀河の果てを目指し
羽搏いていた


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